川柳小噺

エッセイをまとめたら17音になった

安堵

>毛利さんどうぞ

 


看護師さんがドアを開けて私を招き入れた

 


まだ若かりし日のこと

 


その日は精密検査の結果を聞きに行く日

 


初めて行ったその総合病院で

 


ドキドキしながら医師の前に座った

 


結論は

 


>様子を見ましょう。お疲れ様でした。

 


ほっとして席を立ち医師に一礼して

 


スタスタとドアへ向かう

 


安堵の顔でドアレバーを持ち

 


引っ張ったが開かない

 


押しても開かない

 


バリアフリーの言葉もない時代

 


私の辞書に「洋室の引き戸」はなかった

 


ひとり押したり引いたり

 


ガタガタしていたら

 


看護師さん(当時は看護婦さんだった)が

 


いとも簡単にレバーを引いて

 


ドアを開けてくれた

 


若かった私は

 


安堵と照れ笑いの入った変な顔で

 


へこへこしながら病室を出た

 


その後もしばらくその変顔は付着していた

 


                       良性か悪性か待つ2週間                                   

 

 

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